2007年12月27日

◆ 省エネ馬鹿


 温暖化ガスなどの環境破壊がひどい。そこで「環境保護を」「省エネを」という運動がなされつつある。しかし、そのせいでかえって「環境破壊」「エネルギー浪費」という行動を招いてしまうことがある。

 ──

 まず、次の記事を参照。
 CO2抑制、業種別に指標 悪質事業者は公表 環境省案
                   2007年12月18日
 二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出削減に向けた抜本的な強化策として環境省が検討している地球温暖化対策推進法改正案の内容が17日、明らかになった。
 排出量の報告を義務づける対象を広げた上で、業種ごとに排出の抑制指針を定め、取り組みが著しく不十分な事業者は公表するなどの措置をとれるようにする。
 指針では、業種ごとに一定の経済活動当たりの排出量など守るべき指標や対策を環境相が示す。排出の増加傾向が一定以上の事業者に対しては、この指標を守るよう義務づけ、対応が極めて不十分な事業者には排出抑制を勧告、それにも従わなければ企業名を公表し、措置命令ができるようにする。
 官公庁の施設や一定規模以上のマンションなどを新改築する際には、太陽光など再生可能エネルギーによる発電設備を義務づけることも検討する。
http://www.asahi.com/special/070110/TKY200712170291.html
 ここでは「省エネ」という理念がある。それは問題ない。問題は、その方法だ。あまりにも官僚的すぎる。
 つまり、「省エネをするための最善の方法」を取るかわりに、「最も安易に規制できる方法」というのを取っている。(現状は。)

 わかりやすく示そう。エネルギーを浪費している人が百人いる。ここで状況を改善するには、どうするか? 
 第一に、最も浪費している人から順に改善させるといい。「パレートの法則」に従えば、全体の 20%の対象者が改善するだけで、排出量の 80%が削減されるはずだ。……こういうやり方では、効率が良い
 第二に、「頭割り」という方法もある。この場合、全員が一律に 20%ぐらいの削減を課される。しかしながら、このやり方だと、排出量の少ない人では、効率が悪い。下手をすると、削減する量よりも、削減設備にかかる排出量の方が多くなる。……この方法は、いかにも規制しやすいが、効率が悪いのだ。

 ──

 話を戻そう。
 炭酸ガスの抑止ならば、何がいいか? 
 第一に、「環境税」が最も手っ取り早い。大口の人ほど、たくさん努力するので、最適の人が最適の方法で省エネをする。(……これは「最適配分」の問題だから、経済学の手法[市場原理]が最もうまく適用される。)
 第二に、上記の「頭割り」の方法だと、小口の人は、設備への負担(エネルギーやコスト)ばかりがやたらとかかるので、無駄である。たとえば、記事にあるように、「マンションへの太陽光発電」だ。こういうのをマンションに一律に「頭割り」というのを強制することは、とても安易にできる。しかし、その効率は、最悪だ。理由は、次の通り。

  ・ マンションの屋上面積は(室数に比べて)小さい。
  ・ マンションでもただの平地でも太陽光の受光面積は同じ。
  ・ マンションの屋上に太陽光設備を載せると、莫大なコストがかかる。
   (つまり莫大なエネルギー浪費が起こる。)
  ・ 太陽光発電は、一箇所に集中的に建設するのが効率的。
   (あちこちに小口で分散するのは非効率的。)

 どうせやるなら、次の対策の方が、よほどマシである。
 「全世帯から金を集めて、一箇所に集中的に大規模な太陽光発電施設をつくる。場所は、アラブの砂漠地帯や、離島や、沖縄など」(北海道や東北や北陸につくっても効率が悪い。)
 「マンションには、コジェネを義務づける。コジェネでは、つくった湯が余って、使い道が限られやすいが、マンションならば、つくった湯をうまく無駄なく使うことができる」(多数の世帯が集まると、バラツキが少なくなるし、設備の無駄も少なくなる。稼働率が大幅に上がる。)


 ──

 要するに、省エネをやるならば、「規制(強制)しやすい手段」を官僚的に強制するべきではなく、「効率的・経済的な手段」を合理的に推進するべきなのだ。
 大切なのは、環境保護をしようという「意思」ではなく「知恵」だ。知恵なしに意思があっても、無駄なことをやるばかりになる。その結果は、意思に反して、逆の結果を招くことになる。



 
[ 付記 ]
 似た例を一つ。それは「古紙回収」だ。
 古新聞を回収するのは、以前は業者がやっていたが、今では自治体がやることが多い。そのせいで、非効率なことになっている。
  ・ 各人はいちいち重たいものを集積所に運ぶ必要がある。
  ・ そのせいで各人は余計な人的エネルギーを負担するハメになる。
   (重たくて疲れる。)
  ・ 回収の利益は、以前は各人のトイレットペーパーになった。
   だが、以後は、無意味な啓蒙用品などが配布されるだけ。 


 以前だと、古新聞を出して、再生紙のトイレットペーパーが戻ってきた。これならリサイクルになる。
 今では、古新聞を出して、防災用品やら、警笛やら、無意味なものが町内会に配布されるだけだ。あるいは、何も配布されないこともある。どっちみち、きれいな新品パルプのトイレットペーパーが大量に消費されるようになり、環境保護とは逆の結果になる。
 こういうふうに、環境保護とは逆に、環境破壊をやる。
 しかも、そのために、わざわざ税金を払っているのだ。以前は民間業者がやっていたので、各人は税金を一円も払わなかった。一方、民間業者は、業務によって税金を払っていた。自治体は黒字だった。今では逆に、赤字である。古紙回収のために、人件費をかける。部分的には古紙回収の利益が出るが、その利益は町内会に戻ってしまって防災用品などに化けてしまう。結果として、住民は古紙回収の費用負担のために税金を払っていることになる。
 結局、わざわざ金を払って、環境破壊をしているわけだ。ただし、本人は環境破壊をしているのだが、「これで環境保護をしている」というつもりになる。なぜかというと、それまでは民間業者がやっていたが、今度は自治体がやるようになったからだ。
 実際は? それまでは民間業者が効率的にやっていたが、今度は自治体が非効率的にやるようになった。そのせいで、状況は悪化した。しかるに、リサイクル活動を民間でなく公的にやるようになったから、「自治体はよいことをしている」と威張れるようになった。……ここには、合理的な精神などは、何もない。単に「いいことをしています」というふうに、得意になれるだけだ。
 気分だけのリサイクル運動。ま、狂気の一種。「レジ袋有料化」と同様。



( ※ この「古紙回収の無駄」については、前にも述べたことがある。
   → 泉の波立ち 2月05日10月29日

( 本サイト Openブログでも、別件で似た話題を述べたことがある。
   → リサイクル馬鹿  )

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 ※ 本項目は 20日に公開しましたが、項目の順序の都合上、日付を 27日に改めました。
posted by 管理人 at 19:41 | Comment(1) | エネルギー・環境1
この記事へのコメント
 関連する話題として、次の項目もあります。(過去記事)
 → ◆ エネルギー消費効率
http://openblog.meblog.biz/article/1566.html

(政府の定める省エネの指針がいかに馬鹿げているか、という見本。)
Posted by 管理人 at 2007年12月22日 00:32
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